難治癌である膵臓(すいぞう)がんの治療に効果の高い新治療法が開発された。 マウス実験では、全てのマウスのすい臓がん進行が停止でき、転移が抑制されたという。
抗がん剤は血管の隙間から漏れ出してしまい、 ターゲットのがん患部まで十分な薬量が届かないことが問題だった。 さらに、がん患部以外で漏れ出た抗がん剤が、正常な細胞を傷付けることで副作用が出るのだった。
すい臓がんの新しい治療法は、ドラッグ・デリバリー・システム(DDS:Drug Delivery System)という手法を利用した。 がん治療の標的となるがん細胞だけに抗がん剤を届けるためのDDSは、 複数の抗がん剤分子をまとめて球体を形成させた。 球体となった抗がん剤は、途中の血管からは漏れないが、がん細胞の血管の壁は隙間が広いため、 壁を通り抜けて標的のがん細胞に辿り着き、攻撃できるのだ。
新治療法の検証のために膵臓がんを自然発生させたマウス30匹に対して、 有効性が検証された。
A) DDSによる治療グループ
B) 通常の抗がん剤治療グループ
C) 治療をしないグループ
B,Cのグループは、それぞれ肝臓に8匹ずつ、消化管に7匹ずつがん転移が発生し、 56日間で半数が死亡した。 しかし、AのDDS治療を施したグループでは、全てのマウスの膵臓がんの進行が止まり、全てが70日間生存した。 転移は56日目時点で2匹のみ肝臓に転移しただけだった。
がん細胞に直接抗がん剤を届ける新治療の効果は高く、 がんの進行や転移を抑制し、生存率が高められる期待が高まっている。
東京大学が発表した研究成果は、24日付の米科学アカデミー紀要電子版に掲載。